長期熟成スパークリングの先駆け!世界最優秀スパークリングワイン生産者を受賞した“キング オブ スプマンテ”「フェッラーリ」突撃インタビュー

2022/12/23
突撃インタビュー
 
2022年11月30日 マルチェッロ ルネッリ氏 Mr. Marcello Lunelli

最高峰「ジュリオ フェッラーリ」は1972年の初ヴィンテージから8年熟成!まさに長期熟成スパークリングの先駆け!2022年には5回目の世界最優秀スパークリングワイン生産者を受賞!「トレントDOC」を世界に知らしめた“キング オブ スプマンテ”「フェッラーリ」突撃インタビュー

ルネッリ家第3世代
キング オブ スプマンテとしてイタリアンスパークリングの顔とも言える存在のフェッラーリ社。標高の高いトレンティーノの山岳地帯で造られる山のスパークリングとして、フランチャコルタともシャンパーニュとも違う個性を持つ瓶内二次発酵スパークリング「トレントDOC」の存在を世界に知らしめています。2022年には5回目となる年間世界最優秀スパークリングメーカーとしての栄誉に輝きました。2021年にF1公式スパークリングワインとなるなどますます活躍の場を広げています。フェッラーリ社の歴史と現在、代表的な「ペルレシリーズ」、そして長期熟成型「ジュリオフェッラーリ リゼルヴァ デル フォンダトーレ」などについてお話を聞きました。

マルチェッロ ルネッリ氏(写真の左から2番目)
ルネッリグループ社長、フェッラーリ社副社長、醸造技術責任者。現在のルネッリグループ全体を担う第3世代の一員。

1902年創業、120周年を迎えたフェッラーリ。2世代目が長期熟成スパークリングの礎を築き、現在の3世代目がルネッリグループとして拡大発展させる

1902年に創業したフェッラーリ社は今年120周年を迎えました。現在では、フェッラーリのあるトレンティーノだけでなく、トスカーナ州の「テヌータ ポデルノーヴォ」、ウンブリア州の「テヌータ カステルブオーノ」でもワイナリーを経営。さらにミネラルウォーターやジュースなどイタリアの高品質飲料も手掛けています。これらの商品をプロデュースするにあたり、すべてに共通してフェッラーリ社が大切にしているのが「品質」「伝統」「土地」の3つです。

創業者ジュリオ フェッラーリから託された初代ブルーノ、そして長期熟成のスパークリングの先駆け「ジュリオ フェッラーリ」を誕生させた2代目マウロ
創業間もない1906年に開催されたミラノ万博では金賞を受賞しました。何も宣伝などしていなかった時代に高い評価を頂いたのは、何事にもこだわり抜いたジュリオフェッラーリの仕事のたまものだと思います。後継ぎがいなかったジュリオは信頼のおけるブルーノルネッリにフェッラーリを任せることにしたのですが、ジュリオはブルーノと一緒に生産の最初から最後まで管理するほど情熱を注いでいました。

初代のブルーノはこのジュリオ フェッラーリの意思を受け継ぎ、そして2代目のマウロが熟成させるスパークリングに挑戦しました。そうして1971年ヴィンテージが初となる「ペルレ」が、1972年ヴィンテージが初となる「ジュリオフェッラーリ」が誕生しました。当時として大きなチャレンジでした。

The Champagne & Sparkling Wine World Championshipsそして我々3代目がさらに発展させていってます。スパークリングだけでなくトスカーナやウンブリアでのワイン造りも始めました。創業当時、数万本の生産本数だったのですが、今では700万本の生産にまで広がりました。世界的に権威のあるコンクール“シャンパンおよびスパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップ”では毎年重要な賞を受賞しています。2015年、2017年、2019年、2021年そして2022年の5度に渡り、シャンパーニュの有名メゾンなどを抑え、最優秀賞“スパークリングワイン・プロデューサー・オブ・ザ・イヤー”を受賞しました。

3世代目はアレッサンドロ、私マルチェッロ、マテオ、カミッラの4人でルネッリグループを経営しています。フェッラーリ社の社長がマテオ、生産全般についてはアレッサンドロ、技術的なことが私マルチェッロ、そしてプロモーションを担うのがカミッラです。

フェッラーリ F1カルチャー、エンターテイメント、スポーツとのコラボレーション
フェッラーリでは、イタリア国内の空港というイタリアの玄関口でレストランを出店し、お出迎え、お見送りの場を提供しています。また、ヴェネツィア映画祭などのエンターテインメントへの協賛を行っています。2021年からはF1の公式スパークリングワインとなりました。おかげさまで世界中でのフェッラーリの認知度は非常に高まっています。

ジュリオ フェッラーリ、ペルレなど長期熟成ポテンシャルを持つスパークリングワインを生む「トレント」

フェッラーリ トレンティーノトレンティーノは約70%が山地エリアになります。この条件がフェッラーリのワインにとって非常に重要なポイントです。これによりしっかりとした酸を持つワインとなり、長期熟成ポテンシャルを持つスパークリングワインを造ることができるのです。

さらに、昼夜の寒暖差もトレントのワインのポイントです。昼の気温が高いことでアロマと骨格がワインにもたらされ、夜間の冷気が酸を与え、背骨が通ったような確固たるスタイルのワインが造られます。

2017年にトレンティーノの全ての畑がオーガニック認証を受けました。EUとフェッラーリが取り決めたオーガニックに関するプロトコルを契約農家たちにも守ってもらっています。これらを遂行するにはときに非常に困難が伴いますが、私たちの理想を実現するためには必要なことなのです。

全ての畑には蜂の巣箱があります。ブドウは受粉が必要な植物ではないのですが、ミツバチは環境の健全さを見るために重要な生物になります。ミツバチの状態を見ることで私たちの畑の環境のレベルを図ることができます。さらに生物多様性およびサステナブルにも取り組み、biodiversity friendの認定を受けています。これにより、私たちの畑(空気中、土中、水中)にどれぐらいの生物が生きているのかをデータ化し、どれぐらいの生物多様性があるのかみることができます。

フェッラーリの畑と蜂の巣
 

3つのブラン ド ブラン ~ペルレ、ペルレビアンコ、リゼルヴァ ルネッリ~ 比較試飲

フェッラーリ比較ペルレ、ペルレビアンコ、リゼルヴァルネッリの3つについては一緒にテイスティングして頂くとよりその違いが判ると思います。どれもシャルドネ100%で造るブラン ド ブランですが造りが異なりますのでより違いを感じて頂けます。

ペルレとペルレビアンコは、どちらもシャルドネ100%、ステンレスタンクだけで造るトレントDOCになります。通常のペルレはステンレスタンクだけで造られています。トレントのシャルドネに特有の熟したリンゴのニュアンス、フルーティーで酵母のニュアンスもあり、より若々しい印象です。エレガントさの中にイキイキとしたフレッシュさがあります。他の2つに比べると熟成期間は短くなります。

ペルレ ビアンコは、ペルレシリーズの長期熟成ポテンシャルを最大限に表現したワインです。これもステンレスタンクだけで造ります。エレガントさの中により深い熟成感が感じられる、より高い品質を感じ取っていただけます。

リゼルヴァ ルネッリは、前の2つとの決定的な違いは樽を使っていることです。ちょうど創業100周年の2002年が初ヴィンテージなのですが、創業当時に立ち返り、オーストリア産の樽を使っています。ベースのキュヴェを9ヶ月間樽で熟成させています。バニラやスパイスの風味があり、複雑味や苦みがあります。香りの発展、豊かさがより感じられます。

3つのペルレ ~ペルレとペルレビアンコ、ペルレネロ~
フェッラーリ 続いて、ペルレとペルレビアンコ、ペルレネロのペルレシリーズの3つを一緒にテイスティングしてみてください。

ペルレネロはピノネロ100%で造るブラン ド ノワールです。力強く、ピノネロらしさが感じられるワインです。スキンコンタクトを極力減らし、搾ったらすぐに果汁と果皮をわけています。フルーティーさはシャルドネに比べると控えめですが、香りと味に甘やかさがあり、果実系というより品種由来、長い熟成由来の、ピーナッツバターのようなナッツ系の甘みも感じます。ドサージュは3グラム/リットルとかなり少なめです。カテゴリー的にはエクストラブリュットになります。

フェッラーリ 比較

トレンティーノのポテンシャルを見抜いた2代目マウロ氏のチャレンジ!長期熟成スパークリングの先駆け「ジュリオ フェッラーリ」

フェッラーリ  マーゾピアニッツァ
(単一畑マーゾ ピアニッツァ)

初ヴィンテージは1972年です。2代目のマウロ ルネッリが、1972年の収穫によって仕込んでいたワインをこっそりと残して、ひそかに長期熟成させたという実験的に造ったワインです。マウロはこの土地のブドウの長期熟成ポテンシャルを見抜いていて、8年間寝かせてからリリースさせました。

1972年当時は、スパークリングワインは造ったそばから売っていき飲んでいく、という時代です。長期熟成させたワインはシャンパーニュぐらいしかありませんでした。当時イタリアは白はもちろん、赤ワインでも長期熟成させたワインはありませんでした。その時代に白ブドウで長期熟成をやったというのは大きな大きなチャレンジでした。出来上がったワインを飲み、複雑なアロマと複雑味がありながら、まだイキイキ感があったのです。まさに、奇跡のようなワインだと思います。

ジュリオ フェッラーリもそうですが、フェッラーリのボトルは裏ラベルにデゴルジュマンの年数の記載がありますが、この年数はあまり気にしないで頂ければと思います。5年後、10年後に飲んでもらっても十分楽しめます。今飲んで頂いても美味しいのですが、しばらく寝かせて、瓶熟成を重ねて楽しんで頂ければと思います。イタリア国内にもフェッラーリのワインを長く寝かせるコレクターの人たちも多くいます。

ジュリオフェッラーリジュリオ フェッラーリは、初めてのヴィンテージから、フェッラーリ社にとって重要な畑「マーゾピアニッツァ」のシャルドネだけで造っています。良いヴィンテージにだけ造っていて、造る年は50000本ぐらいです。ジュリオ フェッラーリを造らない年は、マーゾ ピアニッツァの畑のシャルドネはペルレなど他のワインに使われます。1973年、1984年、2003年などはジュリオ フェッラーリは生産されていません。マーゾ ピアニッツァは5年前に少し拡張して今、4ヘクタールほどになりました。

ジュリオ フェッラーリのボトルに貼っているマークの鷹は、トレントの町にある噴水に鷹の石像があり、ジーノ氏がこの美しい噴水が好きで、この鷹をラベルに入れたいということで付けました。

日本との友好の証!フェッラーリが外国向けに初めてリリースしたワイン!
フェッラーリ オマージュ NV
フェッラーリ オマージュ NV


日本の元号が平成から令和へと変わるときに、何か記念になる特別なものを日本の皆さんに捧げたいという想いから誕生したのがこのオマージュです。日本をイメージしたラベルデザインで、イタリア以外の国向けに作った初めてのラベルになります。

日本へのオマージュということで日本食に合うように造っています。柑橘系果実を感じる、華やかでデリケートな味わいです。塩味、ミネラル、酸がしっかりと感じられ、バランスの取れたやわらかな味わいです。山のスパークリングの特徴であるキレのある酸があります。フェッラーリのスタンダード「フェッラーリ ブリュット」に使われているブドウと同じエリアのブドウで造っていますが、違いは熟成期間になります。フェッラーリ ブリュットが24~30ヶ月であるのに対し、オマージュは40か月の熟成期間があります。そのため、オマージュのほうがより熟成感を感じられると思います。

試飲コメント:熟した果実の華やかなアロマと柑橘系のニュアンス。塩味、ミネラル、酸がしっかりと感じられるバランスの取れたやわらかな味わい。

モザイクヴィンテージによるゼロドサージュのペルレ
ペルレ ゼロ NV
ペルレ ゼロ NV


ペルレゼロは、ドサージュをせずに造る残糖のないスパークリングになります。4つのヴィンテージ(2009、2011、2012、2014)をブレンドして2015年に瓶詰めしました。私達はモザイクヴィンテージと呼んでいます。これら4つのヴィンテージは3種類の異なる容器(ガラス、ステンレス、木樽)で熟成させています。ヴィンテージの違う、そして熟成容器の違う、異なる個性のワインを、まるでフルーツサラダのように混ぜ合わせて造ったワインになります。

2015とラベルに描いてありますが、これはヴィンテージではなく、瓶詰めをした年を表しています。このキュヴェは毎年造りますが、どのヴィンテージをブレンドするかは毎年考えて決めています。

試飲コメント:柑橘系やミネラルのアロマ。飲むと甘やかな蜜っぽい芳醇な味わいが広がり、それとともに塩味も感じる綺麗なエレガントなスタイル。

60ヶ月以上の瓶内熟成で造るやわらかな泡と味わい
ペルレ ミレジム 2016
ペルレ ミレジム 2016


ペルレとペルレビアンコは、どちらもシャルドネ100%、ステンレスタンクだけで造るトレントDOCになります。通常のペルレはステンレスタンクだけで造られています。トレントのシャルドネに特有の熟したリンゴのニュアンス、フルーティーで酵母のニュアンスもあり、より若々しい印象です。エレガントさの中にイキイキとしたフレッシュさがあります。他の2つに比べると熟成期間は短くなります。
試飲コメント:熟したリンゴやパンを思わせるスパイシーなニュアンス。ドライで爽やかさがあり、柔らかくもフレッシュな味わい。

ペルレシリーズの長期熟成ポテンシャルを最良に最大限に表現!
ペルレ ビアンコ リゼルヴァ 2014
ペルレ ビアンコ リゼルヴァ 2014


ペルレ ビアンコは、ペルレシリーズの長期熟成ポテンシャルを最大限に表現したワインです。もステンレスタンクだけで造ります。エレガントさの中により深い熟成感が感じられる、より高い品質を感じ取っていただけます。
試飲コメント:砂糖漬けの柑橘類の甘やかな香り、上品で丸みのあるエレガントな味わいの中にフレッシュな酸とミネラル。深みがあり、余韻も長い。

創業100周年記念でリリース!創業当時にならい原酒をオーストリア産の大樽で発酵熟成
リゼルヴァ ルネッリ 2012
リゼルヴァ ルネッリ 2012


リゼルヴァ ルネッリは、前の2つとの決定的な違いは樽を使っていることです。ちょうど創業100周年の2002年に造ったのですが、創業当時に立ち返り、オーストリア産の樽を使っています(画像)。ベースのキュヴェを9ヶ月間樽で熟成させています。バニラやスパイスの風味があり、複雑味や苦みがあります。香りの発展、豊かさがより感じられます。
試飲コメント:甘いクリームのような香り、円熟したイーストやスパイスのニュアンス。複雑味な風味の中に心地よい苦みもある広がりのある味わい。

フェッラーリ初のブランドノワール!力強くピノネロらしさを表現
ペルレ ネロ リゼルヴァ 2015
ペルレ ネロ リゼルヴァ 2015


ペルレネロはピノネロ100%で造るブラン ド ノワールです。力強く、ピノネロらしさが感じられるワインです。スキンコンタクトを極力減らし、搾ったらすぐに果汁と果皮をわけています。フルーティーさはシャルドネに比べると控えめですが、香りと味に甘やかさがあり、果実系というより品種由来、長い熟成由来の、ピーナッツバターのようなナッツ系の甘みも感じます。ドサージュは3グラム/リットルとかなり少なめです。カテゴリー的にはエクストラブリュットになります。
試飲コメント:トーストのニュアンス、果実味としっかりとしたコクのある味わい。ペルレの中でも最も力強く、豊かで壮大なスタイル。

長期熟成スパークリングの先駆け!10年間の瓶内熟成!
ジュリオ フェッラーリ リゼルヴァ デル フォンダトーレ 2009
ジュリオ フェッラーリ リゼルヴァ デル フォンダトーレ 2009


初ヴィンテージは1972年です。2代目のマウロ ルネッリが、1972年の収穫によって仕込んでいたワインをこっそりと残して、ひそかに長期熟成させたという実験的に造ったワインです。マウロはこの土地のブドウの長期熟成ポテンシャルを見抜いていて、8年間寝かせてからリリースさせました。

最初から、フェッラーリ社にとって重要な畑「マーゾピアニッツァ」のシャルドネだけで造っています。ジュリオフェッラーリは良いヴィンテージにだけ造っています。造る年は50000本ぐらいです。ジュリオフェッラーリを造らない年は、マーゾピアニッツァの畑のシャルドネはペルレなど他のワインに使われます。1973年、1984年、2003年などはジュリオフェッラーリは生産されていません。

試飲コメント:きめ細やかな泡、蜜や果実などの上品な甘さのある香りのままエレガントで優雅な味わいが口の中に広がる。調和の取れた洗練された味わいが豊かな香りとともに長く続く。
インタビューを終えて
常に新しいことへの探求心を感じさせるフェッラーリ社。主力の「ペルレ」は今では5つのラインナップにまで広がっています。今回、スタンダードの「ペルレ ミレジム」、そして「ペルレ ゼロ」「ペルレ ビアンコ」「ペルレ ネロ」と、ペルレロゼを除く白のペルレを飲み比べるという貴重な機会となりました。複数のヴィンテージをブレンドさせたペルレゼロはとてもユニーク。スタンダードのペルレとリゼルヴァのビアンコも熟成させることでの変化を感じさせてくれました。

長期熟成スパークリングの先駆けの象徴、ジュリオ フェッラーリを飲むと、トレンティーノでスパークリングを造ろうと思い立った創業者のジュリオフェッラーリ氏と、この土地の長期熟成ポテンシャルを見抜いた初代ブルーノ氏の先見の明とチャレンジ精神に感動を覚えます。F1や映画祭などとの協賛など華やかな世界でのプロモーションも目立ちますが、それと同時に、地に足のついた、堅実なワイン造りを脈々と続けているフェッラーリは、まさにキング オブ スプマンテと呼ばれるにふさわしいワイナリーです。

山のスパークリングという稀有なテロワール「トレント」で生まれるフェッラーリのスパークリングの数々。ぜひ、ひとつひとつじっくりと味わっていただければと思います。

フェッラーリ社マルチェッロ ルネッリ氏
フェッラーリのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒