オルネッライアの生みの親ロドヴィコ アンティノリ伯爵が手掛ける少量高品質ブティックワイナリー「テヌータ ディ ビセルノ」突撃インタビュー

2023/03/14
突撃インタビュー
 
2023年2月27日 ニコロ マルツィーキ レンツィ氏 Mr. Niccolo Marzichi Lenzi

オルネッライア、マッセートの生みの親、ロドヴィコ アンティノリ伯爵の最後で最高の夢!少量高品質ブティックワイナリー「テヌータ ディ ビセルノ」突撃インタビュー

生産者さん
オルネッライア、マッセートの生みの親ロドヴィコ アンティノリ伯爵が最後で最高の夢として実現させたプロジェクト「テヌータ ディ ビセルノ」。1999年に、名門アンティノリの名声を築いたピエロ アンティノリ伯爵と初めて兄弟で立ち上げたワイナリーです。高品質かつ少量生産スタイルを貫き、サッシカイアに代表される近郊のスーパートスカンよりも遥かに希少性の高いワインとなっています。本拠地はボルゲリのすぐ北にあるビッボーナという無名の地。サッシカイアは山側のワインであるのに対し、海の影響を受けるビッボーナで造るビセルノは海側のワインだと言います。今回は、ワイナリーの歴史や土地、ワインについて、2人の創設者の甥であるCEOのニコロ マルツィーキ レンツィ氏にお話を聞きました。

2001年創業
オルネッライア、マッセートの生みの親アンティノリ伯爵最後のプロジェクト

オルネッライアよりも素晴らしいワインを造りたいという思いから生まれたスーパートスカン

――今日はよろしくお願いします。前回のインタビューから5年が経ちました。もう一度ワイナリーの紹介からお願いします。
創設者3人
テヌータ ディ ビセルノのニコロ マルツィーキ レンツィです。今回は初めての来日でワクワクしています(笑)。さて、テヌータ ディ ビセルノは二人の兄弟、ロドヴィコ アンティノリ(弟)とピエロ アンティノリ(兄)によって設立されたワイナリーです。ロドヴィコはオルネッライアの創設者でもあります。私は彼らの甥にあたります。

オルネッライアよりも素晴らしいワインを造りたいという思いを持っていたロドヴィコが、ピエロと初めて手を組んで創設したワイナリーです。様々な調査を経て見つけ出した二つの畑で、その畑に適したボルドー品種を用いたスーパートスカンを生産しています。
(写真左から、ニコロ氏、ロドヴィコ氏、ピエロ氏)

――ニコロさんは、いつからワイン事業に携わっていて、初めは何をされていたのですか?
21歳の時から携わっています。最初は、アメリカで(エントリーワインである)インソリオ デル チンギアーレを売る仕事からスタートしました。特にニューヨークでは、街自体が競争的だったので、最初は門前払いにされたり大変でした。ストレスも多かったです。でも、やりがいも多く楽しかったですね。

というのも、ボトルはシンプルなデザインでアンティノリの名前も入っていないですし、ワインの味わいがアイデンティティだったんです。営業に行くと最初はよく怪訝な顔をされたものです。でも、一口飲んでいただけると「美味しい」と言ってくれるのです。外観でもブランド名でもなく、中身から惚れ込んでくれたことが嬉しかったです。

ワイン

少量生産を徹底し、品質向上させ続けるブティックワイナリー「ビセルノ」

――とても貴重な経験をされていますね。
競合の多い市場に入り込むのは大変でした。でも、素敵な経験になりましたね。今となっては、ヨーロッパを中心に多くのご注文をいただいています。他のスーパートスカンの造り手と比べて、生産本数は非常に少ないです。本数が足りず、全ての方にご希望の数をお届けすることができないほどです。ほぼ全てのワインが、『ワインアドヴォケイト』、『ジェームズサックリング』、『アントニオ ガッローニ』などの評価誌で、毎年高評価を得ています。

――ブティックワイナリーのような感じですね。
その通りです。ブティックワイナリーです。例えば、世界のトップワイナリー、シャトーマルゴーやラフィット、イタリアだとサッシカイアなどと比べると10分の1以下の生産量で、高品質なワイン造りをしています。

私たちはたった20年の歴史しかありません。その短い間で、近郊にあるサッシカイア(テヌータ サン グイド)やオルネッライアなどの造り手と(実力的に)差を詰めることができたと思っています。飲んでいただくとお分かりいただけると思います。

――生産本数を増やす予定はあるのですか?
全く考えていません。今までの少量生産のスタイルは変えず、欲しいと言っていただける方にできるだけ届くようにベストを尽くします。ワイン造りは変えず、ワインの品質を進化させていきます。また、私たちはワインのバランスを最重要視しています。バランスに優れたものを造れば、時間が経っても風味のバランスが崩れることがありません。

ワイナリー上空から

サッシカイアのすぐ北!
ティレニア海の海風が吹き込む北マレンマ海沿いの村ビッボーナ

海側のビセルノ、山側のサッシカイア

――地図を見ると、サッシカイアにとても近いです。他のスーパートスカンと飲み比べるのも面白そうですね。
そうですね。サッシカイアは丘陵地帯の畑のブドウも使用する“山側”のワインです。一方で私たちも丘陵地帯ではありますが、(標高100メートルに満たない)海岸沿いのティレニア海の海風が吹く“海側”のワインですね。海に近いことが重要ですね。両者ともに土壌は似ていますが、畑の向きが全く異なります。一番日照量が多い西側を向く畑が多いです。拠点を置くビッボーナは、人口3000人ほどの小さい村です。ボルゲリのすぐ北、そしてサッシカイアのすぐ北にあります。

地図

――畑についても詳しく教えてください。
畑は二つあります。上級キュヴェ「ビセルノ」を造るテヌータ ディ ビセルノ(40ヘクタール)、名刺代わりとなるインソリオ デル チンギアーレを造るカンポ ディ サッソ(56ヘクタール)。合わせて約100ヘクタールあります(作付面積)。

テヌータ ディ ビセルノは、カベルネフラン、カベルネソーヴィニヨン、メルロー、プティヴェルドのボルドー品種。カンポ ディ サッソは、シラーとヴェルメンティーノを主に栽培しています。

――上級キュヴェ「ビセルノ」に使われる区画は、どう区分けされているのですか?
テヌータ ディ ビセルノの中に、合計5ヘクタールのビセルノ用の区画が点在しています。しかし、それら全てがビセルノに使われるわけではありません。ブドウの成熟度合いを見極めて、さらに厳選をしています。ビセルノ以外の区画はイル ピノ用となります。

2つの畑

左からテヌータ ディ ビセルノ、カンポ ディ サッソ
 

「テヌータ ディ ビセルノ」ニコロ マルツィーキ レンツィ氏によるワイン解説

「テヌータ ディ ビセルノ」ニコロ マルツィーキ レンツィ氏に解説していただきながらワインを試飲しました。

ビセルノ唯一の白ワイン!フルーティで軽やか、飲み疲れしない素晴らしいバランス
オッキオーネ 2021
オッキオーネ 2021


ニコロ 1998年に植樹された2ヘクタールのヴェルメンティーノの畑で造っています。ファーストヴィンテージは2019年。フルーティで軽やかなので飲み疲れしない素晴らしいバランスがあります。私たちのテロワールをきちんと理解して造ったからこそ、こういったワインができました。モンラッシェのような畑ではないので、まさかこんなに良い出来になるとは思っていませんでした。
試飲コメント:淡い麦わら色。グレープフルーツなどの白い果実、ミネラル、白コショウの香り。口当たりはソフトで、フルーティかつジューシーな果実味。それらの風味が余韻として持続していきます。

様々な場面で活躍する汎用性の高さ!ビセルノの名刺代わりとなる主力ワイン
インソリオ デル チンギアーレ 2020
インソリオ デル チンギアーレ 2020


ニコロ 入社したての頃に売っていたのが初ヴィンテージの2003年だったので、インソリオは個人的に思い入れのあるワインです。そして、ビセルノの名刺代わりとなる主力商品の一つで、生産量が最も多いワインです。年々品質が向上していて、あらゆる場面で飲む頻度が増えてきました。主な味を決めるのがシラーです。35%~45%のシラーに、カベルネフラン、カベルネソーヴィニヨン、メルロー、プティヴェルドがブレンドされています。セパージュは国際品種ですが、造っている場所はトスカーナです。イタリアで造られたその汎用性の高さを味わっていただきたいです。どんな場面でも活躍できる汎用性も兼ね備えています。
試飲コメント:やや濃いルビー色。凝縮された黒系果実、ドライフラワー、潰した花、スパイシーさのある香り。フレッシュ&フルーティな味わいながら、凝縮果実、チョコ、コショウなど複雑性にも富んでいます。濃密感と明るさを兼ね備えており、飲み疲れしない飲み心地があります。

上級キュヴェ「ビセルノ」と肩を並べるフレッシュで風味豊かな赤
イル ピノ ディ ビセルノ 2020
イル ピノ ディ ビセルノ 2020


ニコロ イル ピノは決してビセルノのセカンドワインという立ち位置ではありません。スタイルが全く異なりますし、よりフレッシュで風味豊かだからです。特に2020年はフルーティさが前面に出ていて、細身で繊細さがあります。2018年は2020年よりも表現豊かだと思います。洗練された上品な味わいに仕上がっています。2016年はボリューミーでワインが歌っているようですね。個人的にとても好きです。実は今、2021年のボトリングをしている最中なのですが、2016年のボトリング時とスタイルがそっくりなんです。おそらく2016年のような化け方をするのではないでしょうか。証明するために5年後また来ますね(笑)。
試飲コメント:2020ヴィンテージ
ルビー色。凝縮果実、ハーブ、チョコなどの甘やかさ、スパイスの香り。果実の甘みと樽由来の甘みが酸と綺麗に調和した味わいが口中に広がり、余韻としてもそれらの風味が長く持続します。

2016ヴィンテージ
濃さのあるルビー色。2020年よりもスパイス香が増している印象で、リッチな果実感と爽やかさを兼ね備えています。全体的にボリューミーで、優れたバランスの余韻が持続します。

2021ヴィンテージ
紫よりのルビー色。スミレなどの華やかさとふくよかな果実の香り。凝縮したジャムのような味わい。明るさとジューシー感に溢れる風味。

厳選に厳選を重ねた少量生産の偉大な上級キュヴェ
ビセルノ 2019
ビセルノ 2019


ニコロ ビセルノはとても人気があって、特別な機会に飲んでいただきたいワインです。ビセルノ用の畑の中から、更にいいブドウを厳選して造っています。納得のいくブドウしか使っていません。2019年は2016年同様にとても素晴らしいヴィンテージでした。どのくらい素晴らしいかというと、まず朝起きて時間通りに目が覚め、仕事場まで全ての信号が青で止まることなくそのまますぐにアクセスできた、というくらいパーフェクトでした(笑)。生産本数は約2万本。最大でも3万本しか生産できません。
試飲コメント:2019ヴィンテージ
濃いルビー色。力強さ、複雑さ、骨格(ボリューム感)、バランス、全てが突出していて素晴らしいです。まだ少し閉じている印象ですが、タンニンもこなれていてフレッシュな酸や果実味とうまく溶け込んでいます。力強いアタックから、最後の余韻までエレガントな風味が長く長く持続します。

2020ヴィンテージ
深みを持った輝くルビー色。スパイシーさ、濃密さ、甘やかさ、潰した花、凝縮果実の力強く複雑な香り。香り同様の統一感のある味わいが口中を覆い、洗練されたタンニンと綺麗に溶け合う余韻が持続します。

2010ヴィンテージ
ガーネット色。ドライフルーツ、ドライフラワー、革、凝縮果実を感じる複雑な香りと味わい。それらの要素が口中にじわじわと広がる深みのある余韻が持続します。とても心地よく満たされるフィニッシュ。

インタビューを終えて
テヌータ ディ ビセルノのワインはどれも凝縮感のある洗練された味わいでした。突出していたのは優れたバランス。男性的な力強い骨格の上に、酸と樽のニュアンス、スパイスが溶け合っていて素晴らしかったです。

CEOのニコロさんが、自社のワインに対して「Lui(彼)」と呼んでいたことが印象的でした。Questo(これ)でも、Lei(彼女)でもなく。このことからも、彼らにはビセルノのワインが男性的なワインだという認識があるのだなと感じました。「ワインが歌っているよう」「ビセルノ19年は全部信号が青だったくらい完璧」などの、豊かな表現力にも惹かれました。

イルピノとビセルノに関しては、複数のヴィンテージを試飲させていただきました。方向性は同じながらもヴィンテージによる個性の違いをはっきりと感じることができて興味深かったです。また、今飲んでも楽しめるし、寝かせても化ける能力があることをしっかりと感じることができました。

少量生産を貫くスーパートスカンの造り手「テヌータ ディ ビセルノ」のワインをぜひご堪能ください。

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