2014年3月24日 ベルターニ社 ステファノ マンジャロッティ氏 来社

2014/03/24
突撃インタビュー
 
2014年3月24日 ベルターニ社 ステファノ マンジャロッティ氏

ステファノ マンジャロッティ氏と記念撮影
アマローネの名門として世界的に有名なベルターニ。150年以上の歴史を誇るワイナリーですが、今もなお進化を続けています。今回、伝統的なアマローネやソアーヴェはもちろん、革新的な新商品「ノヴァレ」のことなど、今のベルターニの話をお聞きすることができました。

自社畑だけでワインを造るこだわりを貫く

ベルターニはフランスで醸造学を学んだベルターニ兄弟が1857年に帰国して設立したワイナリーです。フランスのシャトーの考え方にのっとって、150年経った今でも自社畑だけでワインを造っています。

ベルターニはソアーヴェ、ヴァルポリチェッラなどのデイリーに楽しめるワインから、何年も熟成させて造り上げるアマローネまで数多くのワインを造っているのですごく大きなワイナリーだと思われていますが、実際は自社畑だけなのでそれほど規模は大きくありません。

ヴェローナの周辺の重要な地域に畑を所有し土地の個性を生かしたワインを造る

ベルターニはヴェローナの周辺に畑を所有しています。ガルダ湖周辺のバルドリーノ地区、ヴェローナの北西のヴァルポリチェッラ地区、そして東のソアーヴェ地区です。

ガルダ湖周辺では主に白ブドウと、軽めの赤を造るブドウを栽培しています。このあたりは土壌が比較的新しく、エレガントな味わいになります。ヴァルポリチェッラはアマローネに代表される重厚な赤が主体です。ヴァルポリチェッラ(VALPOLICELLA)とは「ワインの造り手が多く集まっている谷」と言うラテン語から名付けられました。古代ローマ時代の人たちはここが美味しいワインができると知っていたのですね。

そしてソアーヴェ地区。ソアーヴェと言うエリアにはセリエAとセリエBがあります。セリエAは丘陵地でミネラルが豊富な土壌。つまりクラシコ地区です。一方のセリエBは平たんな土地です。ベルターニの畑は全てセリエAの中にあります。

ベルターニの畑の東端から西端までイタリア人なら車で20分ぐらいで行けますが、普通の人は1時間ぐらいかかる距離ですね(笑)。

ベルターニの畑の位置と生産されるワイン地図

ここから試飲をしました

 

ベルターニが最初に造った白ワイン
ドゥエ ウーヴェ 2011
ドゥエ ウーヴェ 2011


ピノグリージョとソーヴィニョンブラン50%ずつで造る白ワインで、ベルターニが初めて造った白です。香りはソーヴィニョンの個性的なアロマがありますが、味わいはピノグリージョらしいふくよかさとしっかりした酸が調和したバランスのとれた飲みやすさがあります。

ベルターニ兄弟それぞれが所有していた畑にソーヴィニョンとピノグリージョが植えられていたのでその二つをブレンドしてみようということで造られました。名前のドゥエ ウーヴェは”2つのブドウ”と言う意味。とてもシンプルなネーミングです(笑)。

ベルターニが初めて造ったソアーヴェ
ソアーヴェ セレオーレ 2012
ソアーヴェ セレオーレ 2012


セレオーレはベルターニが初めて造ったソアーヴェでとても長い歴史があります。1937年のイギリス国王ジョージ6世の戴冠式典の晩餐会にも使われています。
セレオーレはソアーヴェクラシコ地区のモンテトンドにある単一畑です。クラシコ地区の中に醸造を行っていないのでクラシコとは名乗れないのでカテゴリ上はソアーヴェDOCになります。

アルコール発酵は大樽で行いますが熟成はステンレスタンクです。木樽発酵ですが木のニュアンスはあまりなく、程よい酸とミネラルがあって飲み心地がとてもいいワインです。そして10年以上寝かせても楽しめる白ワインです。ヴェローナにある「L’OSTE SCURO(ロステ スクーロ)」という魚料理で有名なリストランテにはセレオーレのバックヴィンテージが揃っていますよ。

フランスの白という位置づけの長期熟成タイプの白ワイン
レ ラーヴェ 2011
レ ラーヴェ 2011


醸造に樽を使った白ワインで、スタイルとしてはフランスワインに近いです。セパージュを変えているのですが、今はシャルドネとガルガネガで造っています。ガルガネガは標高の高いところにある畑のものを使っています。このことでミネラルが豊富なワインとなります。

カテゴリにとらわれない個性的なスタイルの歴史的な赤
カトゥッロ 2010
カトゥッロ 2010


カトゥッロは昔から造っているワインですが、セパージュは変化していっています。以前はカベルネとコルヴィーナで、今はカベルネ、メルロー、オセレータです。カベルネはベルターニにとっては国際品種ではなく、1860年代から栽培している品種です。メルローは少し陰干しさせてカベルネに負けないストラクチャーを持たせています。
カトゥッロは古代ローマ時代のヴェローナの詩人ですが、ラベルに彼の「愛の詩」の一部を描いています。

1860年初リリース!2011ヴィンテージから誕生当初のスタイルへリニューアル
セッコ ベルターニ 2011
セッコ ベルターニ 2011


セッコベルターニはベルターニが初めて造ったワインであり、初めてアメリカに輸出されたイタリアワインです。「イタリアワイン大使」としての役目を果たしていたということで、ラベルにサヴォイア王家の紋章を入れることを許されました。当初はカベルネ、シラー、サンジョヴェーゼのブレンドでした。そのセパージュで復刻したのが「セッコベルターニ ヴィンテージ エディション」です。

誕生当初、セッコベルターニはリパッソではありませんでした。その後1940年にリパッソで造るようになりましたが、2011年ヴィンテージから当初のスタイルに戻そうということでリパッソをやめました。というのも、セッコベルターニは現在の消費者がイメージする「リパッソ=強い凝縮感」とは違うスタイルのワイン。だからリパッソとして造るのではなく、本来のスタイルを踏襲したセッコ ベルターニにしていこうと。私たちはこの変更にとても満足しています。
セパージュもコルヴィーナとメルローに変更しました。メルローは木で乾燥させてから収穫しているので香りに干しブドウのニュアンスが加わります。

ベルターニの新しいリパッソ
ヴァルポリチェッラ リパッソ 2011
ヴァルポリチェッラ リパッソ 2011


ベルターニが新しく造るリパッソです。今、リパッソは世界的に大成功しているワインなのでもはや説明不要なほどです。よく「ピッコロアマローネ」とも言われています。
ベルターニは、市場でよくみられる過度の凝縮感や糖度の高いものではなく、複雑さがありながらフレッシュな味わいのリパッソを造リ続けます。

このリパッソは背が低く直径が広い特製のステンレスタンクで発酵しています。こうすることで果皮と果汁のコンタクトが増え、複雑さが加わります。そして熟成期間を9ヵ月間と短くすることでフレッシュ感を出しています。

独特の栽培方法「タリオ デル トラルチョ」で造る革新的ワイン
ノヴァレ ヴェローナ 2012
ノヴァレ ヴェローナ 2012


ノヴァレは革新的なワインです。「ノーヴァレ」というアマローネになることも可能な畑で栽培されるコルヴィーナ100%で造っています。通常は収穫後に切り落とす枝を収穫前に切って、そのまま畑で1か月間乾燥させるという「タリオデルトラルチョ」という栽培法を行います。これはバジリカータのレマンフレディの「TTアリアニコデルヴルトゥレ」と同じ方法で、実はマンフレディのエノロゴだったアンドレアが今ベルターニのエノロゴをやっていて、この方法を試したのです。

バジリカータではブドウの糖度が上がったのが、ここでは意外な結果になりました。そしてそれは驚きとともに私たちを満足させるものでした。糖度は上がりませんでしたがアロマと色味がアップしたのです。その結果、香りはとてもエレガントになり、味わいはヴァルポリチェッラのベーシックな美味しさが保たれています。アルコール度数も12.5%程度で、消費者が求めている味わいだと思います。

ワイン名ノヴァレは語尾の「レ」にアクセントがあります。これは土地の名前をワイン名に表記できないルールがあるため「ノーヴァレ」と区別するためです。

特別地区ヴァルパンテーナで造るアマローネ
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ ヴァルパンテーナ 2010
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ ヴァルパンテーナ 2010


ベルターニは2つのアマローネを造っています。クラシコは1959年から、ヴァルパンテーナは2001年から造っています。

ヴァルパンテーナはヴァルポリチェッラの7つの渓谷のうち、唯一、ワイン名として名乗ることを許されている特別地区です。エレガントさがこのアマローネの一番素晴らしいところです。アルコール度数は15.5%と高いのですが、非常にエレガントです。

『ワインエンシュージアスト』でイタリアワインを代表するワイン10本に選ばれたアマローネ
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ 2004
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ 2004


アマローネクラシコは1959年から造っていて、ラベルデザインは変えていません。『ワインエンシュージアスト』でイタリアワインを代表するワイン10本にも選ばれていて、イタリアのイコン的な存在です。

ブドウの出来によって造らない年もありますし、生産量も変わります。2005年ヴィンテージは2004年の半分ぐらいしか造っていません。それだけブドウの選別を厳しくしています。また、暑い年は標高が高いところの畑のものを使い、涼しい年は標高が低いところのものを使うなどして品質の安定を図っています。

インタビューを終えて
約4年前(2010年)にワイナリーを訪問させて頂いたときもベルターニの歴史の長さと偉大さを実感することができたのですが、今回は「進化を続けるベルターニ」の一面も知ることができ、とても有意義な時間でした。

それにしてもやっぱり圧巻はアマローネクラシコ。グラスから広がる香りの豊かさ、味わいの複雑味あふれる凝縮感、余韻の長さ。「明日はもっと美味しくなっているよ」とステファノさんはおっしゃっていましたが、開けて2日後も3日後も素晴らしかったです!

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