2012年10月10日 ラヴィス社 エノロゴ兼輸出ディレクター ファウスト ペラトーネル氏来社

2012/10/10
 
突撃インタビュー

2012年10月10日 ラヴィス社 エノロゴ兼輸出ディレクター ファウスト ペラトーネル氏来社

ラヴィスとの記念撮影
絵画を用いたラベルデザインが印象的なトレンティーノのワイン生産者ラヴィス。幅広い商品のラインナップもさることながら、飲み飽きないバランスのとれたエレガントな味わいは食事との相性もピッタリで根強い人気のある造り手さんです。今回来日されたファウストさんはラヴィスに入社して33年になり、まさに「ミスターラヴィス」と呼ばれる存在。ラヴィスの現在の地位を築いた中心人物です。

南に位置するガルダ湖による温暖な気候と北側にそびえるドロミテ山脈にはさまれた恵まれた気候条件

ブドウ畑 ファウスト氏(以下ラヴィス):ラヴィスは1858年にチェンブラット家が設立した小さな個人ワイナリーが起源です。ラヴィスというのは村の名前です。1948年にラヴィス村の農家たちが集まってチェンブラット家のワイナリーをもとにした協同組合ができました。ラヴィス村の産業の中心はワイン造りなんです。

トスカニー:ファウストさんはエノロゴだとか。

ラヴィス:サンミケーレの醸造学校を出て、ラヴィスに入社して30年間エノロゴをしていました。ラヴィスは生産量の80%が輸出なのでそれをさらに強化していこうということになり、ワインのことを一番よく知っている私が輸出も担当することになったんです。

ラヴィス:トレンティーノのワイン生産量はイタリア全体の1%程度に過ぎませんが、品質の高さで国内外に知名度が高いんです。南側はガルダ湖があって温暖な地中海性気候、北側はドロミテ山脈がそびえる大陸性気候。この2つに挟まれた独特な気候条件が良好なブドウを造ります。そして、2つの重要な土壌があります。ひとつはドロミアと呼ばれる石灰が多い土壌、もう一つはポルフィーノと言う火山性の石英斑岩です。ケイ素が含まれているのでワインが非常にフレッシュになります。

協同組合の革命、と呼ばれた徹底的な土地分類と品質管理

地図 ラヴィス:1950年代に栽培農家たちの畑をブドウに適した土地という観点で分類することを始めました。当時は農家の経験がベースになっていましたが、80年代にサンミケーレ醸造学校と共同で土質を分析した上での分類を始めました。1200の栽培農家で1300haですから一人当たりで言うと1haちょっとですね。それをすべて定義付けする本格的なゾナツィオーネ(土地を特性によって分類すること)を行いました。畑や農家ごとで特性もポテンシャルも違いますのでベーシックのワインとハイランクのワイン、とはっきり分けています。
 

トスカニー:全ての畑がどのワインになるかが最初から決まっているってことですか?

ラヴィス:そのとおりです。土地も違えば農家の能力も違います。同じシャルドネを栽培するにしてもディピンティになるかリトラッティになるか最初から決まっています。一般的に協同組合と言うと造ったブドウを一律に集めて、組合員に平等に利益を配分、と言うことになるかと思いますが、ラヴィスでは畑ごとに最終目的が決まっているので組合員が受け取るお金も異なります。これは非常に画期的で、協同「組合の革命」だとイタリア中で評判になりました。

トスカニー:それはいつごろ取り組んだんですか?

ラヴィス:1980年代の半ばです。「プロジェット・クアリタ(品質プロジェクト)」を立ち上げ、それぞれの畑のポテンシャルを定義づけました。組合員は自分のブドウがどのワインになるのかを知っていますので、「これは私が造ったワイン」という意識が芽生えてワインのプロモーションもするようになったんです。

これからは品種で売るのではなく「トレンティーノ」を伝えることが大切

ラヴィス:ラヴィスが造るワインの80%は白です。土地分類をしたことで白ワインに適した土地がはっきりわかり、このような比率になりました。
近年、トレンティーノの造り手の意識が変わってきています。以前は品種が重視されていて、販売するにも「カベルネ」「シャルドネ」「メルロー」というように品種だけを見ていましたが、今は「トレンティーノのワイン」「ラヴィスのワイン」と伝えることを大切にしています。

トスカニー:どの土地で造られているのかを大切にするってことですね。

ラヴィス氏
   

ラヴィス:今まで品種で売っていてうまく行っていたので、あえてトレンティーノを強調することに抵抗もあったようですが、将来のことを考えるとテリトリーを大切にしていかなければならないことははっきりしています。フランス人はそれを「テロワール」と呼んでいますが、私たちは「ジェニウスロチス」と呼んでいます。英語だとテリトリースピリッツ。土地の魂、土地の総合的な価値を大切にするということです。

トスカニー:話は少し戻りますが、畑によってどのワインになるのかが決まっているということですが、買い取るブドウの価格はどのように決めているのですか。

ラヴィス:公正さを保つために7つの規定があります。まず、どの場所のブドウか。たとえばシャルドネを栽培しているとして、どのぐらい適した土地なのかによってベーシックか、ハイランクか、最上級か、を分けています。次に糖度。そしてブドウの健康具合、さらに酸度。それによって100?当たりいくらになるのかが決まっています。さらに、品質プロジェクトに入っている畑に関してはさらに細かい規定があります。例えば、ベーシックワインの畑では収量が1haあたり14トン以下、品質プロジェクトの畑は9トン以下という規定があります。

トスカニー:最初からランクが決まっているとはいえ、結果として出来たブドウの品質が重要ですよね。

ラヴィス:その通りです。品質基準を守って造ったとしても出来たブドウが規定に合わなければランクは落とされます。それから、私たちはエコディナミコと言って、使う水の量など環境に配慮した栽培を指導しているので、それも含めた判断をしています。1200の組合員全員の意見をまとめて品質指導を行うのは決して簡単ではありませんが、すごくうまく機能しています。

トスカニー:日本の農協について詳しくないので比較はできませんが、イタリアの協同組合は本当に素晴らしいですね。

ラヴィス:一人の農家が持つ畑はとても小さいので、自分一人だけではワインを造ることはなかなかできません。だから始めからみんなで協力するという意識があります。農家の中には本業の人もいますし、兼業もいるし、趣味でやっている人もいます。本当に様々なんですが、組合員ひとりひとりののレベルを上げていくと全体のレベルも上がりますし、中には独立できる農家もでてきます。これは非常に嬉しいことです。

ここからワインを飲みながら説明をして頂きました。

テリトリーの特徴がよく表現された若いうちに楽しむシャルドネ

ディピンティ シャルドネ
ラヴィス:ラヴィスのエリアの中でも一番多く栽培されているのがシャルドネです。酸味、塩味、そしてミネラルをしっかりと感じる、このエリアならではの特徴が出ているワインです。とにかくフレッシュなうちに飲むタイプです。
ディピンティシリーズのラベルはトレンティーノ出身の画家パオラ デ マルコリーニに描いてもらいました。

ディピンティ シャルドネ

トレンティーノの土着品種として最古の白ブドウ「ノジオーラ」

シンボリ ノジオーラ
ラヴィス:ノジオーラは、現存する白ブドウの中で最古の土着品種です。トレンティーノは昔は赤ワインが多く造られていた時代もあったのですが、そんなときにもずっと栽培されてきました。非常に強いブドウで、雑草のようにどこでもすぐに育ってくれる品種ですが、栽培されているのはトレンティーノの中だけです。トレンティーノの外ではあまり飲まれてないので栽培農家としてもそれほど重要視していなかったのですが、7,8年ぐらい前から土着品種をもっと大切にしていこうということで、いくつかの生産者がノジオーラに力を入れるようになりました。
ノジオーラの名前はクルミ(ノーチェ)に由来しています。粒の形がくるみに似ていることと、飲んだ後の独特の苦みが若いくるみと似ていることから来ています。

シンボリ ノジオーラ
トスカニー:ノジオーラは長熟もできると聞きました。

ラヴィス:トレンティーノのトボリーノという町ではノジオーラでヴィンサントを造っています。酸がしっかりしているので向いているんです。だから長熟もできます。垂直試飲をしたことがありますが、2004と2007のノジオーラは特に素晴らしかったですよ。

ラヴィスのフラッグシップシリーズ。寝かせて楽しめる白ワイン

リトラット ビアンコ
ラヴィス:リトラッティシリーズはラヴィスのフラッグシップシリーズです。1300haの畑から最も優れた区画だけを使っています。リトラットビアンコは「リトラットプロジェクト」の最初に造ったワインです。シャルドネ、ピノグリージョ、リースリングのブレンドで、リースリングから酸味と熟成による発展、ピノグリージョはストラクチャー、シャルドネはエレガンスを造ります。シャルドネは一部バリック発酵をしています。

トスカニー:上質感と厚みがありますね。とても美味しいです。

ラヴィス:これは2008ヴィンテージですが、昔は4年も前の白ワインなんて売れませんでした。

リトラット ビアンコ
トスカニー:ディピンティ、シンボリ、リトラッティと言うラインナップがありますが、これはファウストさんが考えたのですか?

ラヴィス:(少し照れたように)はい。どのようなワインを造っていくか考え抜いた結果、こうなりました。リトラッティシリーズのラベルは、トレンティーノ出身の19世紀の画家ジョヴァンニ セガンティーニの作品を使っています。私は彼の絵が大好きなんです。彼の展覧会は2011年に日本でも開かれているほどで、「光の画家」として世界的にも有名です。絵画を所有している各国の美術館に行き、特別に写真を撮らせてもらってそれをラベルにしました。

デリケートなピノネロの特徴がきれいに表現された上級ワイン

リトラッティ ピノネロ
ラヴィス:トレンティーノにピノネロが植えられたのは約100年前です。トレントのジュリオフェッラーリがスプマンテを造るために植樹したのが始まりです。赤ワインを造り始めたのは30年ほど前からです。

標高400mのいい条件の畑、ラヴィスのクリュのピノネロです。このワインはピノネロの繊細さを生かす伝統的な方法で造っています。ピノネロのタンニンはとてもデリケートなので、バトナージュもやさしくやさしく行っています。熟成にはバリックの新樽と2,3年目の樽の両方を使います。


リトラッティ ピノ ネロ

ノヴェッロにも長熟ワインにも向く土着品種テロルデゴとラグレイン

リトラット ロッソ
ラヴィス:テロルデゴとラグライン(ラグレイン)で造っています。

トスカニー:ノヴェッロもテロルデゴで造っていますよね。今年のノヴェッロの状況を教えて下さい。

ラヴィス:2012年は例年に比べて早い収穫でした。その分、ノヴェッロを造る時間ができました。日本に来る前にタンクから試飲してきましたがとてもいい出来です。期待していいですよ。
テロルデゴもラグラインもフレッシュな味わいとなるノヴェッロにも向きますし、このリトラットのような長熟タイプにもなります。 これは2007ヴィンテージですがまだまだフレッシュ感があります。昨夜、レストランでこれを飲みまして、隣のテーブルの方にも飲んでもらったのですがとても驚いていらっしゃいました。

リトラット ロッソ  class=
シンボリ ノヴェッロ ディ テロルデゴ トレンティーノ (2012年新酒)
トスカニー:ノヴェッロはいつから造っているのですか

ラヴィス:イタリアで初めて造られたのが1977年。テロルデゴとラグレインで造ったのが最初です。ラヴィスとしては15年ぐらい前からノヴェッロを造っています。11月6日(ノヴェッロの解禁日)に山のフェスティバルを開催していて、地元の人たちに焼き栗とノヴェッロを楽しんでもらっています。

シンボリ ノヴェッロ ディ テロルデゴ トレンティーノ

インタビューを終えて

ファウストさんは優しくておとなしそうな外見に似合わず、ワイナリーのことやワインのことを話し始めたら凄い早口で、とにかくたくさんのことを語って下さいました。「ファウストさんの力なくしてはラヴィスはここまで大きくならなかった、まさにミスターラヴィスなんですよ」と、通訳の山崎さんが教えて下さいました。

それにしてもイタリアの生産者協同組合は本当にうまく機能しているなと改めて実感。特にラヴィスが凄いのは、1200人の農家と1300haの畑を、気候、土壌、そして農家の実力というファクターできっちりと分類し、それに応じてワインのランクを決めていること。自分が造ったブドウからどのワインができるのかが分かっているので、自分のワインに対する愛着も生まれて販売活動にも参加しているというのもいいな、と感じました。

ラヴィスとの記念撮影

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