歴史ある産地ヴァッハウで理想を追求する新進気鋭のワイナリー

ダニエル フォーゲルヴァイトとミヒャエル ドーナバウムのふたりが手掛けるワイナリー「フォン デア フォーゲルヴァイデ」。オーストリア屈指の銘醸地ヴァッハウの南岸、人口わずか160人の小さな村アルンスドルフに4hの畑を所有し、ビオディナミで育てたブドウからワインを造っています。

ミヒャエルは、ドナウ川対岸のシュピッツ村のワイン生産者の家に生まれ、自然とワインの道を志しました。学校でブドウ栽培、醸造、マーケティングを学び、卒業後はオーストリア国内や南アフリカ、ドイツのファルツなどで経験を積みました。

一方、ダニエルはドイツ出身で、ワインとは無縁の家庭育ち。しかし、次第にワイン造りに興味を持ち、シュトゥットガルト近郊のワイン学校へ進学。その後、フランスや南アフリカの名門ワイナリーで経験を積みました。2017年、オーストリア ウィーンのBOKU（自然資源・生命科学大学）の修士課程進学中にダニエルと出会い、ふたりによるワイン造りが始まります。

「二人でやっているからこそ、負担を分担できるのがいい。」

「僕たちは互いに補い合っている。どちらも畑仕事は好きだけど、ダニエルは醸造が得意で、僕はその後の仕事、販売やデザインが好きなんだ。それに、ダニエルは外から来たからこそ、新しい視点を持っている。彼はヴァッハウのワインの作り方を知らなかった。でも、その分、フレッシュな感覚で取り組める。」とミヒャエルは話します。

偉大な伝統の枠を超え、ヴァッハウの新たな可能性を表現するワイン造り

オーストリアのヴァッハウと言えば、グリューナー ヴェルトリーナーやリースリングなど単一品種を使用した高品質なワイン産地として知られています。しかし、フォン デア フォーゲルヴァイデでは多くのキュヴェでブドウ品種のブレンドを行っています。

「最初はこの地域の多くの生産者たちに、君たちのワインは一般的なヴァッハウのワインではないと言われた。しかし、僕たちは一般的なワインじゃなく、僕らのワインを造りたいんだ。」とふたりは話します。

また「自然の一部としてワイン造りを行いたい」と考える彼らにとって、多様性があることはとても重要です。そのため所有する畑は、高樹齢のブドウが植えられた区画が多く、14カ所に細かく分かれ、さらに12のブドウ品種が栽培されています。

ワイン造りについても「伝統的な」ヴァッハウのワインとは異なります。一般的に、ヴァッハウでは熟成にステンレスタンクや大樽を使用しますが、フォン デア フォーゲルヴァイデではブルゴーニュから購入した使用済みのバリックを用います。ミヒャエルは「僕らがバリックを使用しているのは、ダニエルのフランスでのワイン造りの経験も活きているし、僕らのワインには適していると考えているからなんだ。それに何より、小さなガレッジセラーでは、バリックしかドアを通らないんだ」と笑いながら話します。

彼らのワインを飲むと、偉大な伝統の枠を超えた、ヴァッハウの新たな表現を感じることができます。