フリウリの自然派ヴェニカ エ ヴェニカを代表する単一畑のひとつ「ロンコ デッレ チメ」。ロンコとはフリウリ地方で「丘」、チメは「トップ、頂上」という意味があります。つまりロンコ デッレ チメは「丘の頂上」という言葉になります。標高200メートルの北西向き斜面のフリウラーノから造られます。

収穫は9月上旬。酸素が入らない特殊なステンレスタンクで18～24時間、11度の低温で果皮浸漬、発酵終了後40％は20～27ヘクトリットルの大樽、残りはステンレスタンクで6ヶ月熟成。最初の2ヶ月は定期的にバトナージュ。その後アッサンブラージュしてボトリングされます。

ブドウがしっかりと成熟してくれる素晴らしい畑

2019年10月、ヴェニカ エ ヴェニカ社の4代目ジャンカルロ ヴェニカ氏にお話を聞きました「ロンコ デッレ チメの丘の上のブドウは熟す時期が違い、特に古い樹齢のものだとその差は顕著です。ただ、この畑の素晴らしいのは特に何もしなくてもブドウはしっかりと成熟してくれます。私たちは、土地の個性を表現すること、そして品種の個性を表現することを最も大切に考えています。単一品種のワインであっても、なかなかその差が出ていないというワイナリーも見られますが、私たちは土地と品種の個性をリスペクトすべきだと思います。過度なマセラシオンでその個性が見えてこないワインもあり、残念に思います。マセラシオンを否定するのではなく、うまくやれば素晴らしいワインになります。ただ、昨今の傾向で「マセラシオンしたワイン＝自然派」と解釈されることには問題があると考えます」と話してくれました。

90年の歴史を誇るイタリアを代表する白ワインの造り手

フリウリ、コッリオで最も偉大な造り手と言えば間違いなく名前が挙がる偉大な生産者。ヴェニカ エ ヴェニカは、1929年に「ダニエレ ヴェニカ」が古いカンティーナと周辺の畑を購入して始まった90年の歴史を誇るイタリアを代表する白ワインの造り手です。

創業当初、周辺にカンティーナは殆ど無く、ダニエレは条件の良いコッリオの優れた畑を贅沢に所有する事ができたと言います。以来、一度も外部の資本が入る事なく家族経営が続けられ、代々の当主が醸造を担当。現在はジャンニの息子で4代目のジャン カルロに引き継がれています。ジャンカルロはイタリアだけでなく、コント ラフォン等ブルゴーニュでも学び、ビオディナミにも精通。現在はジャンニの妻「オルネッラ」がカンティーナの隣でアグリツーリズモを経営しています。

自然環境の保全にまで心血を注ぐ稀有な生産者

2006年から太陽光パネル、2007年からは葡萄樹等を原料にした暖房設備を導入。カンティーナのほぼ全ての電力と暖房をまかなっています。2011年にはV.I.V.Aサステイナブル ワインに加入し、排出CO2量等、環境への影響を最小限に抑えるワイン造りを実現しています。畑ではビオロジックが導入され、一切の除草剤、防虫剤、ホルモン剤の不使用は勿論、重金属である銅の使用も極小量に抑えられています。単にビオディナミを導入するだけでなく自然環境の保全にまで心血を注ぐ稀有な生産者です。

コッリオ最良の畑ロンコ デッレ チメ」「ロンコ デッレ メーレ」を所有

現在所有畑は28ヘクタールに広がりました。今でも「ロンコ デッレ チメ」や「ロンコ デッレ メーレ」といったコッリオ最良の畑を所有しています。自社ブドウのみで畑はドレーニャ デル コッリオの中に全て位置していて、厳密に55種のミクロクリマに分類する事ができます。区画毎のミクロクリマと土壌を把握し、栽培品種、仕立を変えます。また、収穫も5～10回に分けて行われるので発酵用タンクは小さいものを沢山必要とします。

コッリオのテロワールの表現者「何も加えず、何も隠さず」

丘の最上部、ロンコ デル メーレ畑は標高の低い暖かい区画から収穫し、西斜面、北西斜面、斜面上部と4～5回に分けて収穫。醸造がシンプルで味付け要素が極めて少ないので収穫するタイミングと選果が最も重要と考えています。これは初代から変わらない考え方です。基本的にステンレスタンクで仕上げ、澱との接触期間は5～6ヶ月と短いのは果皮や澱の長期接触は果汁そのものの個性を覆い隠してしまうと考えているからです。何も加えず、何も隠さず、テロワールを最大化するようなヴェニカ エ ヴェニカのワインはまさにコッリオのテロワールの表現者的存在となっています。